あの“どんぎつね”が、ついに覚醒の時を迎えた――。
3月14日、「第48回日本アカデミー賞授賞式」の熱狂冷めやらぬ中、女優・吉岡里帆(32)の名前が、これまで以上に輝きを増して人々の脳裏に焼き付いた。主演の河合優実(24)が話題をさらった映画『あんのこと』に並び、吉岡は出演作『正体』で、並み居る実力派女優たちを抑え、見事「最優秀助演女優賞」の栄冠を手にしたのだ。

芦田愛菜(20)、土屋太鳳(30)、清原果耶(23)、山田杏奈(24)といった錚々たる顔ぶれが名を連ねる中、吉岡の受賞は、単なる幸運では片付けられない、彼女自身の努力と才能が結実した証と言えるだろう。授賞式当日、舞台出演のためリモートでの参加となった吉岡は、画面越しに映る姿からも、その驚きと喜びを隠しきれない様子だった。「びっくりしすぎちゃって」という言葉が、飾らない彼女の人柄を物語っている。
「フラーム」関係者は、安堵と歓喜に沸いただろう。なぜなら、吉岡は昨年4月、長年所属した事務所の閉鎖に伴い、広末涼子(44)が去ったばかりの同事務所へ移籍してきた“新戦力”だったからだ。広末という柱を失った事務所にとって、吉岡にかける期待は並大抵のものではなかったはずだ。
吉岡里帆という女優は、決して順風満帆な道のりを歩んできたわけではない。2017年、ドラマ『カルテット』(TBS系)での怪演をきっかけに、一躍注目を集めた。続くTBS日曜劇場『ごめん、愛してる』でのヒロイン役や、日清食品「どん兵衛」の“どんぎつね”役は、彼女の知名度を飛躍的に向上させた。

しかし、翌年、満を持して挑んだ初主演ドラマ『きみが心に棲みついた』(TBS系)は、視聴率に苦戦。続く主演作『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)も、期待されたほどの成果を上げられなかった。
「当時、彼女はCM7本を抱える売れっ子でした。しかし、主演ドラマの不振から『好感度が高くても視聴率の取れない女優』というレッテルを貼られてしまったんです。以来、主演ドラマのオファーは減ってしまいました」(テレビ誌ライター)
転機が訪れたのは、映画の世界だった。2022年公開の映画『ハケンアニメ!』で、吉岡は新人アニメ監督役を熱演。その繊細な感情表現は、各方面から高い評価を受けた。
さらに、太平洋戦争末期の沖縄戦を描いた映画『島守の塔』では、徹底的な軍国少女を演じきり、演技の幅を大きく広げた。

「この頃から、彼女の演技力は明らかにレベルアップしました。22年3月にNHK BSプレミアムで放送された『しずかちゃんとパパ』では、聴覚障害のある父と2人で暮らす女性を演じ、表情だけで感情を伝える演技は、視聴者の心を掴みました。今回の『正体』での受賞は、彼女の演技力からすれば、必然だったと言えるでしょう」(映画担当記者)
現在、フラームには、有村架純(32)、戸田恵梨香(36)といった人気女優に加え、松本穂香(28)、片岡凜(21)ら、将来を嘱望される若手女優が多数所属している。その中で、移籍組である吉岡が、事務所を牽引する存在になったことは、事務所にとっても大きな喜びだろう。

吉岡里帆は、「あざとい」イメージからの脱却に成功し、演技派女優としての地位を確立した。しかし、彼女には、もう一つ超えるべき壁があるようだ。それは、かつて「どん兵衛」のCMで、新垣結衣と間違えられたという過去。今回の受賞を機に、彼女がその壁を乗り越え、真の意味で“唯一無二”の存在となることを期待したい。
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