能登半島に、再び演劇の光が灯った。七尾市の能登演劇堂で5日、能登半島地震復興祈念公演「まつとおね」(北國新聞社後援)が初日を迎えた。舞台に立ったのは、ダブル主演を務める人気俳優、吉岡里帆さんと蓮佛美沙子さん。平和への祈りを込め、戦国の世を生き抜いた二人の女性の心情を、迫真の演技で表現した。

震災後初の公演となる「まつとおね」は、舞台という非日常的な空間を通して、人々に希望と感動を届けようとする、熱い想いが込められた舞台だ。
約400人の観客が県内外から駆けつけ、固唾をのんで舞台を見守った。その視線の先には、歴史に翻弄されながらも、友情を育み、力強く生きた女性たちの姿があった。
物語は、前田利家の正室「まつ」(吉岡里帆さん)と、豊臣秀吉の正室「おね」(蓮佛美沙子さん)という、歴史に名を残す二人の女性の友情を描く二人芝居だ。
激動の時代を背景に、それぞれの立場や苦悩、そして互いを支え合う姿が、繊細かつ力強く表現される。

吉岡里帆さんは、芯の強さと優しさを併せ持つ「まつ」を見事に演じ、観客の心を掴んだ。凛とした佇まいと、時折見せる憂いを帯びた表情が、戦国の女性の複雑な心情を鮮やかに浮かび上がらせる。
一方、蓮佛美沙子さんは、才知に長け、したたかでありながらも、どこか寂しげな「おね」を熱演。その圧倒的な存在感は、観客を物語の世界へと引き込む。
舞台裏が開く演劇堂ならではの演出も効果的に使われ、物語に深みを与えていた。カーテンコールでは、会場全体が熱気に包まれ、鳴り止まない拍手が、二人の女優の熱演を称えていた。ナレーションは、歌手の加藤登紀子さんが務め、舞台に重厚感と深みを与えた。
舞台挨拶では、吉岡里帆さんが「演劇をすることが復興へ前進する証しだと信じている」と力強く語った。
その言葉には、演劇を通して人々に勇気と希望を与えたいという、強い想いが込められていた。

蓮佛美沙子さんも「能登で舞台をしていいのかと葛藤はあったが、あしたを生きる活力になればうれしい」と語り、複雑な心境を吐露した。
震災の爪痕が残る能登で舞台を行うことへの葛藤はあったものの、演劇を通して人々に少しでも元気を与えたいという、真摯な想いが伝わってきた。
七尾市出身のプロデューサー、近藤由紀子さんと、脚本家の小松江里子さんも来場を呼びかけ、故郷への想いを語った。
「まつとおね」は、単なる歴史劇ではない。震災からの復興を願い、明日への希望を託した、力強いメッセージが込められた作品なのだ。
激動の時代を生き抜いた二人の女性の姿を通して、困難に立ち向かう勇気や、支え合うことの大切さ、そして平和への願いが、観客の心に深く刻まれたことだろう。

23日まで計20回上演される「まつとおね」。能登の地で、希望の光を灯し続けるだろう。
震災から立ち上がろうとする能登の人々にとって、この舞台は、単なる娯楽ではなく、心の支えとなる、希望の象徴となるだろう。
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