あれは去る12月のことだった。女優・吉岡里帆さんが、都内の映画館で行われた映画『正体』の大ヒット御礼舞台挨拶に登壇し、意外な告白をしたのだ。それは、彼女がこれまで抱いていた“恋愛もの”に対する苦手意識と、それが本作の撮影を通してどのように変化したのか、というものだった。
「恋愛ものに苦手意識…? 吉岡里帆さんの意外な告白」
舞台挨拶に集まったファン、そして報道陣も、この言葉に一瞬息を呑んだのではないだろうか。常に新しい挑戦を続ける吉岡さんが、意外にも恋愛ものに苦手意識を持っていたとは。いったい何が彼女をそう思わせていたのだろうか。そして、映画『正体』は、彼女にどんな変化をもたらしたのだろうか。

映画『正体』は、染井為人氏の同名小説を原作に、横浜流星さん主演、藤井道人監督がメガホンを取った作品だ。日本中を震撼させた殺人事件で死刑判決を受けた主人公・鏑木(横浜流星)が、ある目的のために脱走し、偽名を使い、容姿を変え、間一髪の逃走を繰り返す“343日間”を描いた、息もつかせぬサスペンスドラマである。
吉岡里帆さんは、東京でフリーライターとして潜伏していた鏑木と出会い、一緒に暮らし始める沙耶香を演じた。指名手配犯だと気づきながらも、彼の無実を信じるという、非常に難しい役どころだ。沙耶香の「君には未来を生きる権利がある」という台詞は、本作を象徴する名台詞の一つとして、多くの観客の心を打った。

舞台挨拶で吉岡さんは、映画の撮影中、「自分の中で変化した部分があった」と回想した。
「これまで出演する作品については、恋愛ものに対して特に苦手意識が強かったんです。恋愛感情ってすごく個人的なものですが、観客に共感してもらわないと伝わらない。そういう意味で、とても難しいジャンルだと感じていました。」

彼女は、率直にそう語った。恋愛感情を表現することの難しさ、そして、それを観客に共感してもらうことのハードルの高さを、これまで肌で感じてきたのだろう。
だからこそ、彼女はこれまで「社会派の作品や家族をテーマにしたもの、あるいは仕事を題材にした作品を好んでやってきた」という。社会問題に切り込んだ作品、家族の絆を描いた作品、仕事の厳しさや喜びを描いた作品。そういった作品を通して、彼女は女優としての表現力を磨いてきたのだ。
しかし、映画『正体』で沙耶香を演じる中で、彼女はこれまで感じたことのない感情に出会う。

「愛情がワーッと心の中に湧き上がる感覚」
吉岡さんは、その時の感覚をそう表現した。それは、恋愛という言葉ではくくりきれない、もっと深く、もっと普遍的な愛の感情だった。沙耶香は、指名手配犯である鏑木を愛し、彼の無実を信じ、未来を生きる権利があると信じる。その強い想いが、吉岡さんの心を揺さぶり、彼女の中に眠っていた新たな表現力を引き出したのだ。
「藤井監督となら、そういった恋愛を超えた深い愛の物語を一緒に作れそうだなと、すごく思いました。」
舞台挨拶の最後、吉岡さんは、藤井監督にラブコールを送った。彼女は、映画『正体』を通して、恋愛というジャンルに対する苦手意識を克服し、新たな表現の可能性を見出したのだ。

あの舞台挨拶から数ヶ月が経った今、吉岡里帆さんは、女優として更なる高みを目指し、様々なジャンルの作品に挑戦し続けている。彼女の演技に対する真摯な姿勢、そして、常に新しい自分を追い求める貪欲さは、多くの人々を魅了し、感動を与え続けている。
映画『正体』は、吉岡里帆さんにとって、単なる出演作品の一つではなく、女優としてのターニングポイントとなった作品と言えるだろう。彼女のこれからの活躍から、目が離せない。
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