「もう、完璧主義は卒業しました」
国民的女優、吉岡里帆。その言葉は、これまで彼女を縛り付けていた重荷を下ろし、新たなステージへと踏み出したことを告げる、静かなる宣言だった。かつて、彼女は自らに課した厳格なルールに縛られ、完璧であろうと必死にもがいていた。しかし、30代を迎え、気づいた。「完璧なんて、無理なんだ」と。その気づきは、彼女をより軽やかに、より伸びやかに、そして、より美しく輝かせている。

第49回報知映画賞助演女優賞受賞という輝かしい実績を携え、吉岡里帆がこの春挑むのは、令和6年能登半島地震復興祈念公演『まつとおね』。戦国武将・前田利家の妻であり、気丈な女性として知られる「まつ」を演じる。32歳になった吉岡里帆だからこそ表現できる、温かさと逞しさに満ちた「まつ」が、そこにはいるはずだ。舞台にかける彼女の想い、そして、彼女自身がたどり着いた境地とは――。
「まつ、という女性は、私にとって、みんなに愛された人という印象でした。包容力と母性に溢れ、困難に立ち向かう人の背中をそっと押せる魅力、そして、逞しさから生まれる語彙力。その両方を兼ね備えているからこそ、多くの人から愛されたのでしょうね」
今回の舞台のために、能登にも足を運んだという吉岡里帆。震災後の能登の現状を目の当たりにし、同時に、震災以前の能登についても知る必要性を感じたという。
「能登は、祭り文化が非常に盛んな地域なんです。祭りに情熱を注ぎ込む人々の姿に触れ、能登の新たな一面を発見しました。今回の公演は、復興祈念公演であると同時に、能登という街が持つ魅力を伝えるものでもあると思っています」

祭りが盛んな京都で育った吉岡里帆にとって、能登の祭り文化は、どこか懐かしいものだったのかもしれない。
演出を務めるのは、歌舞伎俳優の中村歌昇。古典芸能のエッセンスを取り入れた、新たな舞台が期待される。吉岡里帆自身も、子どもの頃から歌舞伎に親しんできた。

「演劇や映画を好きなのは、非日常的な世界を、様々な工夫を凝らして表現しているところなんです。
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