「……また雑草か。」
春の陽気に誘われて庭に出た瞬間、雅人(まさと)は思わずため息をついた。去年の夏、汗だくになって草むしりをした記憶がまだ鮮明に残っている。だが、雑草は容赦なく蘇り、再びその小さな庭を支配しようとしていた。
「今年こそ、奴らに勝つ。」
そう決意した雅人が向かったのは、地元のホームセンター「コメリ」。そこで出会ったのが、ベテラン店員・佐藤さんだった。佐藤さんは雅人の話を聞くなり、目を細めて言った。
「防草シートを敷きなさい。それが、一番手っ取り早く、確実な方法ですよ。」
防草シート──それは、太陽光を遮り、種子が発芽しにくくすることで雑草の成長を防ぐ特別な素材でできたシートだった。土に密着させることで草の侵入を封じ込め、さらには除草剤などに頼らずとも長期間きれいな庭を保てるという。
「ただ敷くだけでは駄目ですよ」と佐藤さんは続けた。「ちゃんと手順を守らないと、シートの隙間からまた生えてきますからね」
雅人は心の中で頷いた。これは、ただの作業ではない。
雑草との戦いなのだ。

帰宅後、雅人は軍手をはめ、まずは敵──雑草の根を一つひとつ丁寧に取り除いていった。クワとスコップを駆使し、まるで土地を清めるかのように草を削っていく。
「ここに……俺の平穏を取り戻すんだ」
尖った石や、地面の凹凸も入念に処理した。防草シートは繊細だ。少しの油断で破れてしまえば、そこから侵略が始まる。完璧な地ならしを終えたその庭は、まるで戦の前の静寂のように整っていた。
「いよいよ、本丸だ」
広げた防草シートは重厚で、確かな手応えがあった。風になびかないよう、雅人はゆっくりと、隙間を作らずに一枚ずつ丁寧に敷いていった。重ね部分は10センチほど取る。織物ゆえ、切り口はほつれやすい。だからこそ、事前に補修テープを貼り、その上からハサミを入れる。
「ふむ……まるで着物を仕立てているようだな」
そして折り返して固定することで、見た目にも美しい仕上がりに。接合部分には専用の接着テープを用いて、さらにズレを防ぐ工夫も忘れない。細部に魂を込めた、男の手仕事がそこにあった。
「ここからが正念場だな」
防草シートの固定には、U字型のピンを使用。柔らかい土には長めのピンを選び、風が強く当たりやすい箇所には間隔を狭くし、多めに打ち込む。
障害物の縁にできた隙間には、ハサミで微調整を施しながら、ぴったりとフィットさせる。
雅人の手つきは、もはや職人のそれに近い。気が付けば日も傾き始め、庭には静かな達成感が漂っていた。

最後に、敷いたシートの上に砂利を敷く。これが美観を高めるだけでなく、紫外線によるシートの劣化を防ぐ二重の効果を持つ。仕上がった庭は、まるで別世界のようだった。
「ふぅ……やったな」
佐藤さんの言葉が思い出される。
「防草シートは、手間を惜しまなければ、庭の未来を守ってくれますよ」
その通りだった。
エピローグ:雑草なき静寂へ
翌朝、鳥のさえずりに目を覚ました雅人は、窓から庭を眺めた。そこには、雑草一つない、穏やかで静かな庭が広がっていた。
──これが、防草シートの力か。
静かに微笑んだ雅人は、次の計画を思い描いていた。
「……今度は、花壇でも作ってみるか」
こうして、雑草との戦いは幕を閉じ、ひとりの男と一枚のシートが織りなした小さな物語は、静かに終わりを迎えた。
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