ある日の午後、私は仕事中に一本の電話を受けた。発信元は、なんと警察署だった。
「お宅の息子さんが、万引きの件でこちらに…」その瞬間、私は頭の中が真っ白になった。なぜなら、私の息子・健太は――七年前に事故で亡くなっているのだ。
「どういうことですか? 私の息子は、もう…」

そう答えると、電話口の警察官は少し戸惑い、「それは何かの間違いではないですか?ご本人が“母親の連絡先はここだ”と…」と返してきた。
信じがたい話だった。しかし、息子を名乗る少年がいる以上、無視するわけにもいかず、私は指定された警察署へと向かった。
応接室に通され、そこには制服を着た一人の中学生が座っていた。彼はどこか所在なげで、しかし私の顔を見るなり、静かにこう言った。
「あなたに話したいことがあります。ここでは話しづらいので、公園まで来てもらえませんか」

私は戸惑いながらも頷き、彼と並んで警察署の隣の公園へと歩いた。人の少ないベンチに腰を下ろすと、彼は深く息を吸って言った。
「俺は、あなたの旦那の子どもです。浮気相手との間に生まれました」
時が止まったかのようだった。
少年は、古びた写真を私に差し出した。そこには、若かりし頃の夫と、見知らぬ女性、そして幼い頃のこの少年が写っていた。私が知らなかったもう一つの「家族」が、そこに写っていたのだ。
「信じてくれとは言いません。でも…俺も父親に裏切られた気持ちでいっぱいなんです。母さんは、俺が生まれても彼と正式に結婚できなかった。その理由が、あなたの存在だったって、最近知ったんです」
私は言葉が出なかった。涙がにじみそうになるのを必死で堪えた。
「じゃあ、なぜ私に連絡を?」
「ずっと迷ってました。でも…あなたが健太くんのお墓の前で花を供えている姿を見て、この人には伝えるべきだって思ったんです」
まさか、あの子と同じくらいの年頃の子に、こんな言葉をかけられるとは――。私は深く息をつき、彼の目をまっすぐに見つめた。
「話してくれてありがとう。とても辛かったでしょう」
「はい。でも、父とその女の人にだけは、ちゃんと責任を取ってもらいたい。俺も、あなたも、騙されていたんですから」

私は頷いた。この子の存在を否定することも、非難することもできない。何より、彼の姿にはどこか、息子・健太の面影があったのだ。
その日から私は、夫の裏切りの証拠を集め始めた。過去のメール、通話履歴、そして家計に残された不自然な支出の痕跡…。そして、ついに証拠が揃ったある日、私は夫を家に呼び戻した。
リビングのテーブルには、証拠のすべてを並べていた。夫が帰宅し、それを見た瞬間、明らかに顔色が変わった。
「説明してもらえるかしら?」
夫は一言も発せず、その場に崩れ落ちた。そして、呼び出された浮気相手が現れたとき、私は彼女にもこう告げた。
「録音しています。あなた方の関係は、すでにすべて明らかです。慰謝料の請求、法的手続き、すべて進めさせていただきます」
その場で、夫は離婚届に署名した。浮気相手は逆上し、私を罵倒したが、私は一言も返さなかった。代わりに、私の横には、あの少年――英人(えいと)くんが静かに立っていた。
「俺の母親を、侮辱しないでください。あなたが父を誘惑したことで、何人が傷ついたと思ってるんですか?」
彼のその言葉に、私は初めて涙を流した。健太が生きていれば、きっとこんなふうに私を守ってくれたかもしれない。そんな思いが胸にこみ上げた。
――こうして、私は真実と向き合い、夫との決別を果たした。そして、英人くんとは時折連絡を取り合い、少しずつだが信頼を築いている。
人生は時に、想像を絶するような真実を私たちに突きつける。だが、逃げずに向き合ったその先にこそ、本当の「強さ」があるのだと、私は今回の出来事で知った。
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